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 上山田温泉と亀の話

 明治元年二月のある寒い朝、上山田の浦島太郎ならぬ若林才兵衛という漁夫が、いつもの通り魚取りに河原に出てみると、浅瀬に大きな亀かいた。
あまり逃けようともしない亀の側にいってみると、身を切るように冷たい筈の足の裏がぽかぽかと暖かく感じる。
不思議に思って、足であたりをかきまわしてみると、下の方から更に暖かさが増して来る。驚いてあたりを掘って行くと、かなり熱い湯が湧き出ていた。
これは温泉に間違いないと、近所の人たちと語らい、遂に河原に底なし桶を伏せて湯舟として、即製温泉か出現した。しかも、このお湯で胃腸病や 気や皮膚病、それに焼けどなども癒るというので評判はまたたく間にひろまった。
 しかし、千曲川は毎年のように洪水があり、湯の出る場所は常に流され、建物を建てる事も出きぬまま、せいせい底無桶を伏せて入浴するくらいであったのである。そして、いつとはなしにその存在も不明となってしまった。
 明治三十四年春のこと、当館主の祖母タカ女が、茄子にまつわる夢枕に吉兆を見た。そして、河原の水たまりにいた亀を子供がいじめているのを見て子供に小遣いを呉れ逃がしてやった。
 ところが、亀は再びその水溜りに来て子供につかまっているのである。タカはまた買い取ったが、これぱきっと此処に温泉があるとの神のお告げであると悟り、村の有力者と計り、遂に温泉掘削に成功、「かめの湯」と命名し、今日の戸倉上山田温泉の隆盛の基をつくったのである。
 なお、現在のホテル亀屋本店の場所が「かめの湯」の跡である。
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